受託制作ソフトウェアに係る収益の計上単位の考え方

受託制作ソフトウェアに係る会計処理については、基本的に工事契約に関する会計基準(平成19年12月17日)に準じた処理となっており、税務処理も同様となります。

法人税法22条2②が定める収益認識について、受託制作ソフトウェアに係る収益の計上単位の考え方を整理したいと思います。

 原則的な考え方

計上単位に関する税務上の考え方は、法基通2-1-1 収益の計上の単位の通則 で示されており、原則的な考え方は以下となります。

法基通2-1-1 収益の計上の単位の通則
資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供に係る収益の額は、原則として個々の契約ごとに計上する。

つまり、例えば1つの契約書の中で開発ステージ毎に完成・引渡を要する場合であっても、工事完成基準を適用する場合の収益の計上単位としては、原則的にはその契約に定める全ての完成・引渡が完了したときに収益計上を行うことになります。

 例外的な考え方

上記通達のただし書きには、一定の要件を満たす場合は、契約書単位での収益認識に代えて、実質的な取引単位で計上が認められています。

(2)一の契約の中に複数の履行義務が含まれている場合 それぞれの履行義務に係る資産の販売等

(注) 2 工事(製造及びソフトウエアの開発を含む。以下2-1-1において同じ。)の請負に係る契約について、次の(1)に区分した単位における収益の計上時期及び金額が、次の(2)に区分した単位における収益の計上時期及び金額に比してその差異に重要性が乏しいと認められる場合には、次の(1)に区分した単位ごとにその収益の額を計上することができる。

(1) 当事者間で合意された実質的な取引の単位を反映するように複数の契約(異なる相手方と締結した複数の契約又は異なる時点に締結した複数の契約を含む。)を結合した場合のその複数の契約において約束した工事の組合せ

(2) 同一の相手方及びこれとの間に支配関係その他これに準ずる関係のある者と同時期に締結した複数の契約について、ただし書の(1)又は(2)に掲げる場合に該当する場合(ただし書の(2)にあっては、上記(注)1においてみなして適用される場合に限る。)におけるそれぞれただし書の(1)又は(2)に定めるところにより区分した単位

この考え方は、工事契約に関する会計基準 の「7. 工事契約に係る認識の単位」において、当事者間で合意された実質的な取引の単位を反映するように複数の契約を結合した場合の収益の認識時期及び金額と同一の相手方及び関連当事者と同時期に締結した複数の契約について契約の結合・履行義務の識別のルールに則った場合の収益の認識時期及び金額との差異に重要性が乏しいと認められる場合には、前者の当事者間で合意された実質的な取引の単位により収益の計上をすることが代替的な取扱いとして認められているところであり、法人税でも同様の取扱いとすることが本通達の(注)2において明らかにされているものと考えられます。

 

税理士 三木 孝夫

 

 

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