海外コンサルタントへの支払に係る消費税

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で海外出張等が制限された結果、海外のコンサルタントからWeb会議システム等を通じてサービスを提供してもらうケースが増えたと思われます。税務通信3710号(2022年07年04月)によると、消費税法上、この事業者向けのコンサル料が仕入税額控除の対象(リバースチャージ方式)となるには、まず契約内容の主目的が「電気通信利用役務の提供」に該当するか否かを検討する必要があります。

 役務の提供に係る支払対価が仕入税額控除の対象となるには、内外判定により国内取引に該当することが必要となります。内外判定の基準は、原則、“提供が行われた場所”であるが、インターネット等を介し国境を越えて行われる「電気通信利用役務の提供」に該当するものは、例外的に“提供を受ける者の所在地”となります(消法2①八の三、4③二、三)。

 例えば、Web会議上で相談した事案にコンサルタントが即時回答すること(サービス①)と、コンサルタントが収集した現地情報等をWeb会議上で報告すること(サービス②)の両方を一体で年間契約する場合、主目的がサービス②に該当すると、現地情報等の収集(他の役務提供)をWeb会議上で伝達しているだけとみて、全体が「電気通信利用役務の提供」に該当しないこととなる。年間費用をそれぞれのサービスが占める提供の割合で按分することなどは不要となります。

 なお電気通信利用役務の提供に該当しない取引は、通信そのもの、若しくは、その電気通信回線を介して行う行為が他の資産の譲渡等に付随して行われるもので、具体的に以下のようなものです。


  •  電話、FAX、電報、データ伝送、インターネット回線の利用など、他者間の情報伝達を単に媒介するもの(いわゆる通信)

  • ソフトウエアの制作等 ※ 著作物の制作を国外事業者に依頼し、その成果物の受領や制作過程の指示をインターネット等を介して行う場合がありますが、当該取引は著作物の制作という他の資産の譲渡等に付随してインターネット等が利用されているものですので、電気通信利用役務の提供に該当しません。
  •  国外に所在する資産の管理・運用等(ネットバンキングも含まれます。)
    ※ 資産の運用、資金の移動等の指示、状況、結果報告等について、インターネット等を介して連絡が行われたとしても、資産の管理・運用等という他の資産の譲渡等に付随してインターネット等が利用されているものですので、電気通信利用役務の提供に該当しません。ただし、クラウド上の資産運用ソフトウエアの利用料金などを別途受領している場合には、その部分は電気通信利用役務の提供に該当します。
  • 国外事業者に依頼する情報の収集・分析等
    ※ 情報の収集、分析等を行ってその結果報告等について、インターネット等を介して連絡が行われたとしても、情報の収集・分析等という他の資産の譲渡等に付随してインターネット等が利用されているものですので、電気通信利用役務の提供に該当しません。 ただし、他の事業者の依頼によらずに自身が収集・分析した情報について対価を得て閲覧に供したり、インターネットを通じて利用させるものは電気通信利用役務の提供に該当します。 
  • 国外の法務専門家等が行う国外での訴訟遂行等 ※ 訴訟の状況報告、それに伴う指示等について、インターネットを介して行われたとしても、当該役務の提供は、国外における訴訟遂行という他の資産の譲渡等に付随してインターネット等が利用されているものですので、電気通信利用役務の提供に該当しません。

 最後にバースチャージ方式により申告をする必要があるのは、一般課税により申告を行う事業者で、その課税期間の課税売上割合が95%未満の事業者に限られることにご留意くださいませ。

 

税理士 三木孝夫

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