中国から日本への役務提供の回収に係る送金に対する税務上の留意点

中国の国内法となる企業所得税法第3条及び企業所得税法実施条例第7条により、中国国外法人が中国国外で提供したサービス活動については、たとえ、中国法人に対価を請求したとしても、企業所得税はそもそも非課税です。加えて、日中租税条約により、たとえ、中国国内で行われた役務提供活動であっても、恒久的施設(PE)を構成しない限り、日本法人が獲得する当該所得については企業所得税が免除されるロジックとなっています。

しかしながら実務上では、中国から日本への役務提供に関する送金にあたり、規定に反して、中国で企業所得税が課税されるケースがあり、その一方で、日本においても、本来、国外に課税権がない外国税額として、日本での外税控除の有無が議論されるケースも見受けられます。
(なお増値税については、企業所得税の取り扱いの如何によらず、日本法人の中国国内へのサービス提供は、原則、課税となる。中国法人において、源泉徴収納税証明書を以って、仕入増値税として、以後の売上増値税から控除することが想定される)。

月刊 国際税務 2022年06号「中国から日本へのサービスフィーの送金にかかる税務手続き」の記事では、税務登録を要する5万米ドルを超える初回送金の重要を指摘しており、この初回の税務手続きがその後の同一の契約書にかかる送金時にも影響を及ぼすことを示唆しています。また送金時の税務局との事前照会において、以下に関する交渉・確認の重要性を指摘しております。

  • 役務提供の実態があるか否か
  • 役務提供地が中国国内か中国国外か
  • 中国国内で行われた役務活動ではあった場合、恒久的施設(PE)を構成するか否か
  • 恒久的施設(PE)を構成する場合、これに帰属する所得が合理的に算出されるか否か
  • 恒久的施設(PE)を構成する場合、合理的なみなし利益率
  • 使用料等に該当するか否か(特に、技術関連のサービスについて)等

最後にすでに課税扱いを受けている契約書にかかる送金につき、非課税、免税の扱いに変更することは、まだ送金手続きを行っていない新たな契約書について一から税務局に事前照会し、交渉するよりもハードルが高く、基本的に、初回送金時の税務手続きが、その後の同一の契約書にかかる送金時においても踏襲されることが指摘されています。
このあたりには日本の税務処理においても似たようなところがありますね。。。

 

税理士 三木孝夫

PAGE TOP