コロナ禍における移転価格ガイダンスの仮訳のリリース

国税庁は2月24日、OECDによる新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大に関する移転価格執行ガイダンス」の仮訳をリリースしました。新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大により生じた、または悪化した問題に対し、独立企業間原則及びOECD移転価格ガイドラインをどのように適用するかという点に焦点を当て、重要性の高い(i) 比較可能性分析、(ii) 損失及び新型コロナウイルス感染症特有の費用の配分、(iii) 政府支援プログラム、(iv)事前確認の4つの問題についてまとめられています。

赤字企業の取引が比較対象になることも

独立企業間価格の算定に当たり比較対象取引を選定しますが、通常、赤字の企業の取引を比較対象とすることは稀です。しかしながら、コロナ禍においては、赤字が生じている企業の取引でも、その取引内容や性質等を考慮し適正であれば、比較対象の取引となり得るなどとされています(ガイダンス33等)。また、比較対象となる取引の選定でその候補となる企業と自社の営業利益率等を比較する際に、通常は生じない特別な損失を除いて検討すべきですが、コロナ禍で生じたテレワーク費用については、今後も恒常的に生じる損失として営業利益率等の計算に含めることも考えられるようです(ガイダンス49等)。

APAの改定申し出も検討

コロナ前にAPAを実施している場合も一度行われたAPAは原則有効で、納税者や税務当局はそのAPAの内容に拘束されますが、APAを実施した当時とコロナ禍の現在とでは経済状況が変わっているため、当初決めていた利益率などの前提となる条件等が大きく変わるなど、APAの重要な前提条件に抵触する場合には、企業がAPAの改定を当局に申し出るといった対応も考えられます(ガイダンス90,97等)。

 

税理士 三木孝夫

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