税務調査において、海外取引で問題となりやすいポイントに「源泉徴収漏れ」が挙げられます。
海外の企業や個人(非居住者等)への支払いがある場合は、源泉徴収の要否を検討する必要があります。
【海外取引等に係る源泉所得税等の実地調査の状況】
出所:国税庁「平成29事務年度法人税等の調査事績の概要」
非違件数、追徴税額
平成27事務年度:1,527件、170億円
平成28事務年度:1,556件、 43億円
平成29事務年度:1,684件、 78億円
非違の内訳(比率)
1位: 使用料等(28%)
1位: 人的役務提供事業(28%)
3位: 不動産賃貸等(12%)
4位: 給与等(9%)
4位: 不動産譲渡(9%)
6位: 配当(8%)
7位: 利子(6%)
※追徴税額2,000万円以上のもの
海外の企業や個人に対して、こういった内容の支払いがある場合は特に注意しましょう。個人的にも、ロイヤリティ(使用料等)や役務提供(人的役務提供事業)に関する支払いについて、税務調査で源泉徴収漏れを指摘されているケースや、源泉徴収が必要かどうか質問されるケースが多いというイメージがあります。
「源泉徴収が必要かどうか悩むことが多い」
「この支払いって、源泉徴収する必要あります?」
こういった声をよく聞きますが、海外の企業や個人に対する支払いについて、源泉徴収が必要なケースと必要ないケースがあることで、源泉徴収の実務が複雑になっていると思います。
とはいえ、
「海外の企業や個人(非居住者等)への支払いがある場合は、源泉徴収に注意が必要だ」
という認識があるだけで、源泉徴収漏れのリスクはかなり軽減出来ているとも言えます。この認識がなかった方には、まず源泉徴収への意識を持っていただければと思います(源泉徴収が必要かどうかわからなければ、聞けばよいわけですし)。
源泉徴収の要否に関する判断については、また改めて触れたいと思います。
公認会計士・税理士 長野 弘和